化学大手のカネカがTwitter上で炎上している。
パタハラ(育児をする男性への嫌がらせ・パタニティ(父性)ハラスメントの略)を受けた社員の妻がTwitterにその内容を投稿し、瞬く間に広がったのだ。
詳細な経緯は以下の通りとなる。
②マイホーム購入、妻の仕事復帰と子供の保育園も決定
③男性社員、職場に復帰
④翌日に転勤命令
⑤転勤日を交渉するも応じてもらえず
⑥退職を決め、有給消化を相談
⑦有給消化を応じてもらえない上に、退職日まで指定される
この件について、当のカネカは「事実を確認しているが、これも当事者が当社の社員であるとはっきりするまでコメントできない」としている。
もちろん、この件は片方のみの主張なので、すべて事実と決めつけるのは早計だが、たった1つのツイートが、大企業のホームページを閉鎖に追い込み(カネカ側はシステム障害と主張)、株価にも影響を与えた。
この事実はとても大きい。
本件は、日本のブラック企業を淘汰するために多くの示唆を与えてくれている。
今回は、このカネカ炎上事件から見える、これからの時代に日本のブラック企業が確実に淘汰されるまたは、しなければならない理由について述べてみよう。
カネカだけではない!世界で炎上する日本の企業たち
まず初めに、日本の近隣の国々の労働観と海外から見た日本の企業のイメージについて語りたい。
自分は現在、香港に住んでおり、2年前まではシンガポールで暮らしていた。
香港やシンガポールの企業は定時帰りは当たり前で、有給は100%消化(もちろん、残業もあるが必要最低限。ただし現地の日系企業は除く)。
業務内容も欧米を中心に広がっているのジョブ型(雇用契約時に仕事内容や勤務地を明確にし、専門の能力を磨いていく働き方)のため、カネカ炎上騒動の様に育休取得後に左遷と言うことは絶対にない。
自分には中国・上海出身のパートナーがいるが、彼女曰く・・・
中国も同様に、特に都市部での労働環境やワークライフバランスの意識は確実に日本を上回っている。
もちろん、スタートアップなどは「996(朝9時から夜9時まで、週に7日間働く意)」と言われ、過酷な労働環境で知られている。それについて、アリババの創業者ジャック・マーが
と996を擁護する様な発言をして、SNSやメディアで大炎上したのは記憶に新しい。
それくらい、中国でもワークライフバランスの意識は浸透しているのだ。
例のパズっている化学の会社。
中国出身の彼女曰く
「これが中国だったら、不買運動が起きて一瞬で潰れるで」
さすがドルバガを追い出した国。
争いを好まないのは日本人の美徳だけど、主張しなければ、こういう組織がいつまでものさばることになる。#カガクでネガイをカナエル会社
— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2019年6月2日
翻って日本は労働環境と意識については、欧米の国々だけでなく、アジアの国々まで後塵を拝すまでになってしまった。
低賃金、長時間残業、そして英語にまでなったKaroshi(過労死)。
日本にいると中々気づかないが、香港でもシンガポールでも中国でも日系企業はその労働環境から、就職先として地元の人たちから敬遠されている。
以前にも紹介したが、香港では下記のような日系企業に就職する上での注意点が、インターネット上でいくつも出回っている。
日本企業で働くなら、知らないといけない事実(在日本公司工作,你不可不知道的事實)
確かに、世界での日本人の評判は悪くはない。
だが、それとは対照的に日系企業の労働環境の世界的な評判は、全く芳しくないのが現実なのだ。
では、なぜ日本の企業は欧米はもとより、アジアの国々までに労働環境とその意識の点で抜かれてしまったのだろうか?
カネカ炎上から見るブラック企業の未来
香港、シンガポール、中国、そして欧米の国々の人々と働いていると、日本人と大きく違うと感じることがある。
それは「自己主張」だ。
これは違うと思ったら、それが会社であろうと上司であろうと自分の意見をきちんと主張する。
日本では「権利ばかり主張するな」と揶揄されるが、それこそ有給から残業代、仕事の進め方など、あらゆる点で「自己主張」をするのだ。
始業時間前に強制出勤させられて、残業代が出ないと知った外国人同僚達が、人事部へ抗議。
タジタジなる人事部を見て、彼らの「おかしいこと」はおかしいと主張できる行動力と勇気は見習いたい。— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2019年3月21日
彼らが衝突を恐れないのは、いつでも会社を変えられる(転職する)という選択肢があるからだ。
翻って、日本の場合は、長らく1つの企業に定年まで働く滅私奉公型で、転職も容易ではなく、自分の人生が会社に紐づいてしまっていた。
さらに「長いものには巻かれろ」という言葉があるように「お上に自己主張すること=悪」といった風潮も存在する。
長い間、多くの人が声をあげたくてもあげれない環境であった訳だ。
今回のカネカの炎上の件が、こんなにも拡散された理由は、多くの人の日本の企業に対する、長年溜まっていた鬱憤が爆発した結果と言えるだろう。
もちろん、カネカ炎上の件に代表される理不尽な人事や劣悪な労働環境は、以前からSNS上で散見されたが、今回の件で大きく違う点は、「カネカ」という大企業の社名をツイート主が名指したことだ。
多くの人が個人を特定され、報復や転職が難しくなるのを恐れて、躊躇してきたことを勇気をもって実行してくれたことが共感を呼び、他の企業も動かすまでに至った。
今、日系企業に勤める友人から聞いた話。
幹部集めて、カネカの二の舞にならないようにガバナンス強化が話し合われたらしい。
日本の労働環境は他先進国と比較して、20年は遅れてるけど、たった一つのツイートが大きく時計の針を前身させた意義は大きい。#カガクでネガイをカナエル会社
— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2019年6月3日
今まで日本の企業は、滅私奉公型の労働を逆手に取り、自分の都合の良いように好き放題やってきた。
そんな日本の企業の思い上がりに、大きな風穴を開けたのが今回の件だ。
日本は、今後ますます労働人口が減少して行き、労働力が不足する。1つの会社に縛られる人も少なくなっていくだろう。
そうなれば、企業側は選ばれる立場だ。
育休取得やくるみんマーク(少子化対策として子育て支援のための行動計画を認証されたことを示すもの)など「外面(そとづら)」だけ取り繕っても、そこで働く人が働きやすい環境にしなければ、SNSを通して、瞬く間に拡散され、企業の評判が落ちるだけなく、中で働く人も他社へ移っていく。
そんな時代がすぐそこまで来ている。
今回のカネカ炎上で使われたTwitterだけではなく、現在はVorkersの様な社員による会社に対する評価を集めたサイトなど、企業の評判や風土、労働環境などの情報は簡単に手に入る。
社内のことでもすぐに企業の悪判として拡散するネット社会は、就活生や転職希望者からすれば企業をよりスクリーニングしやすくなる環境だ。
逆に企業側からすれば、社内のことでも細心の注意を払い、フェアな環境を提供しないと、今回の件の様に内定者自体が続出という結果になりかねない。
企業は選ばれる立場。
これを強く意識しなければ、ブラック企業はどんどん炎上し、淘汰されていくだろう。
ブラック企業は炎上させて、燃やさなければ日本の未来はない
今回のカネカ炎上騒動で、少数だが散見されたのが以下の様な人達だ。
この様な人間は、はっきり言って、自己に厳しいところをアピールして、自己陶酔しているに過ぎない。
日本はこれからどの国も経験したことがない未曾有の超高齢・人口減少社会に突入していく。
2060年には総人口が9,000万人を切り、うち45%超が60歳以上の高齢者となると見込まれる。
外に出れば、歩いている人の半分近くが60歳以上。そんな社会が日本に確実に訪れるのだ。
そんな中、多かれ少なかれ、海外からの若い労働者が必ず必要になってくる。
だが、日本と同時に14億人を抱える中国をはじめ、韓国、香港、シンガポールなどの近隣諸国も高齢化・人口減少社会に突入していく。
これらの国々の間で、東南アジアをはじめとした若い優秀な人材の争奪戦が起こるのは確実なのだ。
そんな時に彼らは日本を選んでくれるだろうか?
給与の面で中国、香港、シンガポールに勝てるだろうか?
有給・育休とは名ばかりの制度を持つ日本の会社をどう思うだろうか?
上記の様に、「甘え」と言って自己陶酔している日本人達は、先見の明になく、グローバルな視点が欠けていると言わざるを得ないのだ。
「日本の企業なんかに就職するんじゃなかった」
日本の大学を卒業した中国の友人が語った本音。
いつの日か、東南アジアの人達も同じことを言う日が必ず来る。
外国人は安価な労働力じゃなくて、日本のファンになって貰うような国策をしないと、この国の未来はヤバいと思う。 pic.twitter.com/OEF2JMTqTO
— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2018年12月7日
最後に
今回のカネカ炎上の件は、以下の2つのことを示唆している。
・転職が当たり前になり、1つの会社に縛られる必要がなくなる中で、今回の様な件は確実に増えていく。
高齢化・人口減少社会に突入していく中で、近い将来、近隣諸国との若くて優秀な外国人人材の取り合いは確実に起こるだろう。
その時に備えて、他国に負けない魅力ある労働環境を作ることは必須となる。
それには、日本人がSNSをはじめとしたインターネットを武器にして、どれだけブラック企業と戦えるかにかかっているのだ。
だいたい脳科学というのが流行りだしてからインチキ臭い情報ふえたな。養老孟司氏はバカの壁でいっていることはもっともなのだが、それを教祖のようにしてバカの壁を壊すんだってか?壊し方おかしいから炎上する。特にこの「脳科学」がスレたてまくって良好な科学技術情報が遮蔽されおかしな状態。そもそも企業が個人名を宣伝の一部品とみなしているのが過ちで、それがSNSを生んだのだが、強い個の確立こそが民主主義の前提であるように、SNSで強い個を確立するための教育はなされていない。この個の確立にとって一番マイナスなのが、毒吐きであって情報ネットワークの上でもともとやってはいけない、あるいはやってもいいが相応の覚悟が必要で、政治家などはいつもそれを考えて実名をもって実名を批判できるわけなのだから。