香港に来て半年以上が経過し、香港のオフィス環境にも徐々に慣れて来た。
この半年間、香港で働いてみて感じることは、同じアジア人でも働き方や仕事に対する価値観は日本のそれとは大きく異なるということだ。
今回は、そんな香港のオフィスの様子を香港人の働き方や仕事に対する価値観を交えながら、紹介してみることにしよう。
※あくまでもウチのオフィスだけで、香港のすべてのオフィスには当てはまらないかもしれないので悪しからず。
香港のオフィスの朝
香港のオフィスの朝は非常に遅い。
出勤時間なるものは存在するが、どこかの国のように「〜分前出勤」と言う概念は存在しない。
「10分前出勤」を命じようものなら「10分ぶんの給与を出せよ」となるのだ。
「5分も前に出勤してもやる気がないと見なされる国」から来た自分は、10分も前に出勤しているが、50名いるオフィスの中で、オフィス出勤順位ベスト10には余裕で入ることができる。
多くの香港人は、出勤時間ギリギリにやってくる。彼らの8割が5分前出勤である。
なぜ出勤時間ギリギリにやってくるのか?
それは「○○分前出勤」と言うのが契約書に書かれていないからだ。
契約社会の香港では、契約書に書かれていないこと以外は基本やらない。
例えば30分前出勤させたければ、契約書に「出勤時間は9時とする。ただし、30分前にはオフィスにいるべし」と書く必要がある。
ただし、このように契約書に記載したからといって、「出勤時間前の給与は出しません〜」と言うことはできない。
労働基準法が機能していない国では、まかり通るかもしれないが、ここは香港。香港社会がそれを許さない。
そのため「出勤時間は9時とする。ただし、30分前にはオフィスにいるべし」としても給与はきちんと払わなければならず、「出勤時間は8時半とする」と同じ意味になってしまうのだ。
かの国で給与も出ないのに「〜分前出勤」と言うのがまかり通るのは「少しでもタダで働かせたい会社」と「会社への忠誠を態度で周囲に示したい従業員」の思惑が一致しているからこそ成り立つものなのである。
では、何故多くの香港人は毎日定時にきっかり出社できるのだろう?
それは交通機関が常に定時運行だからだ。
香港では、世を儚んで線路に身を投げる「人身事故」や喧嘩や痴漢による「お客様同士のトラブル」で電車が止まるということがほとんどない。
交通機関が常に正常に動いているので、ほぼ狙った時間に出勤できるのだ。
時間を見誤って遅刻するものも毎朝必ずいるが、何事もなかったように自分のデスクに着席する。
もちろん、誰も咎めるものはいない。
彼らにとって4~5分の遅刻は遅刻のうちに入らないのだ。
ある国では「社会人たるもの(時間の)余裕を持って出勤しなさい」というセリフが印籠の様に使われていたが、香港では「社会人たるもの(心の)余裕を持って出勤しなさい」となるのだ。
香港のオフィスの昼休み
香港人は仕事上のトラブルがあろうと納期が迫ってようと「昼休みを返上して仕事をする」ということは絶対にない。
どんな修羅場の中でも昼休みは外にみんなで昼食を食べに行く。1人で食事をする人はあまりいない。
彼らの食に対する執念は凄まじいものがある。
流行りのお店があれば、何時間でも並ぶ。日本人も並ぶのが好きと言われるが香港人も負けてはいない。
しかし、香港は世界有数の人口密集都市。そのオフィス街ともなれば、どこのお店も混雑具合が半端ない。
そのため、あまりゆっくりと昼食を取ることが出来ないのが問題点だ。
もちろん、ランチを食べに出ていたっきり、昼休み時間内に戻ってこない場合も多い。
何故なら、彼らにとって4~5分の遅刻は遅刻のうちに入らないからだ。
香港のオフィスの定時
自分が知っているとある国では・・・
・定時に帰ろうとすると「皆が頑張っているのにひとり先に◎△$♪×¥●&%#?!」という上司
・残業時間で部下を評価する上司
・・・というものが存在するらしい。
しかし、香港ではそのようなことは一切ない。
彼らはオフィスが定時を迎えると、一斉に帰りの支度をし始める。
彼らの頭の中に「上司が先に帰らないと帰りづらい」「自分だけ先に帰るのは気まずい」と言った発想は一切ないのだ。
香港では法律上、残業を出さなくても良い(法律で決まっていても残業を出さない、サービス残業という悪習が存在する国もあるらしいが)ので、残業代が出ない会社も多い。
そのため、残業は繁忙期などの必要最低限で、自分のオフィスは遅くても6時半〜7時には消灯する。
香港人が深夜までサービス残業をすれば、100万ドルと呼ばれる香港の夜景をさらに彩るのは間違いないだろう。
そのような環境のため、電車の中で寝ていたり、深夜の電車で酔い潰れているサラリーマンは、ここ香港では絶対に見ることは出来ないのだ。
香港のオフィスの上下関係
香港では新卒採用というものが存在しない。そのため「新入社員は〜!!」といった煩わしい慣習も存在しない。
入社年次はもちろんのこと、役職や年齢には囚われずに仕事をしている。
むしろ上司が部下を気持ちよく働けるように、かなり気配りしている印象だ。
たまに我が部署のメンバーで飲みに行くと、上司が部下に積極的にお酌をしている。
香港人の友人曰く「お酌や飲み会の幹事は面倒見のいいキャラの人が会社や部署に必ずいて、その人がやってくれるので、若いからと言ってお酌や幹事をする必要はない」とのこと。
どうやら、香港では年齢や入社年次ではなく「キャラ」で役割分担が決まるらしい。
香港の転職・退職
香港では転職は日常茶飯事だ。
会社に不満があったり、良いオファーがもらえれば、すぐに転職する。転職時に転職回数や年齢は大きなマイナスポイントにならないためだ。
「良いオファーがあれば転職するのは当たり前」というのが香港人の考え方だ。
以前、香港に駐在で来ている某国の駐在員と話す機会があったが、「彼らは会社のために働かない」と嘆いていた。
「会社のために働く」
彼らの国ではそれが当たり前の考え方かもしれない。
しかし、その考え方を海外まで持ち出して、通用すると思っているのなら大きな間違えだ。
ちなみに香港人は退職の際、「バイバイケーキ」と称して同僚にケーキを配る習慣がある。
このケーキの値段や味によって、その人のその会社での評判が最終決定されると言う。
最後に
今までここに書いたことは、以前に自分が暮らしていたシンガポールでもそっくりそのまま当てはまる。
どちらも自分というものをしっかり持っていて、いい意味でも悪い意味でも自由人だ。
周りが何を言ってもを気にしない強心臓なところがある。
そのストレスフリーな環境が世界一の長寿国たる所以かもしれない。
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