「香港の税金は安い」
日本に居ても、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。
日本でもよく知られている様に、確かに香港の税金は安い
実際に香港に住んで見ると肌で実感できる。日本では給与から毎月3割ほど取られていた税金が、こちらでは数パーセントという安さだ。
では、なぜ香港の税金はこんなに安いのだろうか?
こんなに安くて政府の歳入は十分なのだろうか?
この疑問を解消すべく、今回は香港の税金の安さの秘密をわかりやすく簡単にまとめて見ることにしよう。
香港の税金はなぜ安い?
香港は低税率を掲げ、世界中の企業を誘致し、発展を遂げて来た歴史がある。
そのため、日本と比較すると税金の面で様々なアドバンテージが存在するのだ。
以下に代表的な税金におけるメリットをあげてみよう。
・住民税なし
・相続税なし
・贈与税なし
・健康保険料なし
・キャピタル・ゲイン非課税
・所得税最大15% ※日本は最大45%
・法人税16.5% ※日本の法人税実効税率は29.97%
※課税所得200万香港ドル(約2,900万円)までは8.25%
この様に日本と比較すると個人、法人に関わらず、収めるべき税金が少ないのがわかる。
では、なぜこの様な低税率でやっていけるのだろうか?
次からは、香港の税金の安さの秘密を3つの観点から説明していこう。
税金の安さの秘密その1 複数の歳入源
このような低税率を実施できる背景は、香港の政府の歳入と歳出を見て行くと理解しやすい。
下記は日本と香港のそれぞれの政府のホームページに掲載されている収入源の内訳だ。
出典
HK government the 2017-18 budget
財務省
図を見ると日本の歳入は、ほとんどが税収と国債で賄うのに対して、香港には様々な歳入源があることがわかる。
特に土地に関する歳入(Land Premium)が、1,000億香港ドルと法人税(Profit Tax)の次に大きな割合を占めている。
これは、香港の土地政策に依るところが大きい。
香港では土地が政府のものであり、不動産会社は、その土地のリース権を競売で購入して住宅を建設する。その競売による収益が香港政府の重要な歳入となっているのだ。
税金の安さの秘密その2 お金の使い方
日本と香港のお金の使い方にも大きな違いがある。
下記は日本と香港のそれぞれの歳出の内訳だ。
日本の一般歳出(上記のグラフから地方交付税交付金等と国債費を除いたもの)に、社会保障費が占める割合は55パーセント。17年度の国家予算では60パーセントにも達する。
一方、香港では”Social welfare”と”Health”を足した社会保障費に当たるものは、わずか30パーセント。単純比較すると、香港の社会保障費は日本の半分となっているのだ。
日本も香港も少子高齢化社会に直面しているが、日本は社会保障を借金をしてまで手厚くしているのに対して、香港は教育やインフラにお金をかけて、経済成長を最優先するスタンスが伺える。
経済成長を優先させて、国際競争力を高め、世界中から外国企業を誘致する。
結果、雇用も生まれて、税収も増えるという仕組みになっているのだ。
税金の安さの秘密その3 予算の作成方法
国の1年間のお金の使い方を計画する予算の作成方法も日本と香港は大きく違う。
日本は「1年間にいくら必要か?」という観点から予算を作成し、足りなければ国債で穴埋めをするというやり方だ。
一方、香港は以下のルールに基づき、予算を作成している。
・Strive to achieve a fiscal balance and avoid deficits – 収支のバランスを考え、借金は避ける
・Keep the budget commensurate with gross domestic product – GDPに合った予算作成
つまり、香港では歳入以上にお金を使わないことが大前提になっている。歳入以上にお金を使わなければ、借金をする必要もない。
そのため、香港の財政備蓄は18年3月時点で1兆920億香港ドル(約16兆円)。これは収入が一切なくても2年間、国を回せる金額だ。
「この蓄えたお金をどの様に使うか?」という贅沢な悩みにも見える議論も毎年発生している。
18年度は所得税の減額や貧困家庭の学生に現金を支給などを行なったが、過去には香港市民全員に現金6,000香港ドル(約8.5万円)を支給などの大盤振る舞いもあった。
片や日本は、借金が国と地方の合計では1,100兆円と、GDPの2倍にも上る。
一般家庭に置き換えると、「年収の2倍の借金がある日本」と「年収の2倍の貯金がある香港」となるのだ。
最後に
まとめると香港の税金の安さの秘密は以下の3つとなる。
・複数の歳入源
・身の丈にあった予算
・経済成長を最優先するお金の使い方
ここまで書いていくと香港はとても魅力的な場所に見えるだろう。
確かに税金の安さで、多くの外国の企業、投資家を呼び込み、国際競争力も強く、財政も健全だ。
しかし、裏を返せば、香港政府の政策は弱者を置き去りにしてきたものとも言える。
経済成長を最優先し、社会保障をギリギリまで切り詰めた結果、アジアで一番貧富の差が激しい場所になってしまっているのだ。
街では高額な家賃を払えない人が、24時間営業のマクドナルドに寝泊まりするMcRefugee(マクドナルド難民)が大きな社会問題にもなっている。
それぞれをもう一度、一般家庭に置き換えると、日本人は「年収の2倍の借金があるが、福利厚生がしっかりしているホワイト企業に勤務」、香港人は「年収の2倍の貯金があるが、競争の激しい外資系金融に勤務」と言えるかもしれない。
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