日本のスマホは、電車内での痴漢や盗撮防止のため写真を撮るときに「カシャ」って操作音がするんでしょ?
4年くらい前の話になるが、台湾人の友人にこう言われ、写真を撮るときに操作音が出るのは、日本だけであることを初めて知った。
確かに日本では、携帯を使った電車内の盗撮や痴漢の話をニュースなどでよく耳にする。駅構内も痴漢防止を訴えるポスターがたくさんある。
しかし、海外に住んでいると、このような痴漢防止を訴えるポスターや痴漢の話をほとんど見聞きすることはない。
では、なぜ日本だけが、こんなにも痴漢が多いのだろうか?
よく日本で耳にするのは、(痴漢に限らずだが)「欧米と比べると〜」と言った欧米諸国を引き合いに出して、日本の痴漢の多さを議論するものだ。
しかし、そもそも欧米と日本とでは文化や習慣が違いすぎるし、比較するには少々無理がある。
そこで、今回は自分が住んだ経験のあるアジアの国々を引き合いに出して、なぜ日本の電車は痴漢が多いのかを考えてみることにした。
なぜ日本の電車は痴漢が多いのか?その理由を本気を出して考えてみた!
自分の住んでいる香港、出張等で長期滞在することもある中国、2年ほど前に住んでいたシンガポールでは電車内の痴漢に関する話はほとんど聞かない。
統計データーがあるわけではないので、定量的な比較は難しいが、駅構内に痴漢防止を訴えたポスターは皆無だし、ニュースで痴漢によって誰かが捕まったという話も聞かない。そもそも女性専用車両すら存在しない。(中国は一部の都市で女性専用車両を導入している)
日本と同じアジア圏で文化や思考が似ているにも関わらず、なぜこんなにも違いが出てくるのだろうか。
これには日本だけの特殊な理由があると仮説が立てられる。
その理由を分析してみると、日本で痴漢が多発するのは、たった1つの本質的な原因によるものなのではという結論に至った。
そして、そのたった1つの原因に、それを助長させる4つの間接的な要因が重なり合わさり、日本で痴漢が多発しているのだ。
日本の痴漢を助長させる4つの間接的要因
日本で痴漢を引き起こす、たった1つの本質的な原因を述べる前に、痴漢を助長させる以下の4つの間接的要因から説明しよう。
・巨大なアダルト市場
・低い女性の社会的地位
・自己主張を良しとしない文化と教育
この4つの要因が重なり合って、日本の痴漢という犯罪を助長させている。
以下、順番に一つずつ理由を見ていこう。
痴漢の間接的要因その1 異常なまでに混雑する電車
よく日本で痴漢が多い理由の1つとして聞くのは、「満員電車は欧米には存在せず、日本特有のもので、混雑した閉鎖的な空間が痴漢を引き起こす」というものだ。
確かに、満員電車という混雑した閉鎖的な空間は、女性の体に密着しても気づかれにくく、痴漢が発生しやすい要因を作っている1つかもしれない。
しかし、あくまでもそれは間接的にだ。
なぜなら、自分が住んだことがあるアジア圏の国々でも、朝のラッシュ時は(日本ほどではないにしても)体が密着するくらい混雑するからである。
それでもこれらの国々で痴漢が少ないのは、電車という狭い空間そのものが痴漢の本質的な原因ではないことを表している。
だが、本質的な原因ではないにしろ、日本の満員電車という閉鎖的な空間が、痴漢の助長させていることに疑いの余地はないだろう。
痴漢の間接的要因その2 巨大なアダルト市場
これもよく言われることだが、日本のアダルト市場の大きさが痴漢の多さの原因になっているという説だ。
日本に住んでいると日本がポルノ大国のように感じる人も多いかもしれない。確かに日本のコンテンツとしてのアダルトは種類豊富だ。
だが、これは何も日本に限ったことではない。欧米はもちろんのこと、中国、インド、戒律の厳しいイスラム教ですら、その国独自のアダルト市場がある。
詳しくは割愛するが、日本以上に性産業が盛んな国もたくさんあるのだ。
また著名なビジネス雑誌「カナディアン・ビジネス」は下記のように述べている。
China, South Korea and Japan seem to be the three biggest generators of porn-related revenue -中国、韓国、日本はアダルト市場を牽引する世界の3大マーケットである-
日本のアダルト市場が大きいのは事実かもしれないが、それが原因で痴漢の多いという考えが正しいのなら、中国も韓国も同様に痴漢が多いことになる。
だが、実際はそうではない。
日本のアダルト市場の大きさを痴漢の多さに直接結びつけるのは、少し無理がある。
だが、直接的な原因でないにしても、痴漢というシチュエーションに特化したアダルト動画あるように、多かれ少なかれ、痴漢という行為を助長している側面はあると言えるだろう。
痴漢の間接的要因その3 低い女性の社会的地位
インドでは年間3万4600件以上のレイプ事件が報告されているという。
なぜインドではこんなにもレイプ事件が多いのだろうか?
それは伝統的に男性上位の社会の上で、女性には何をしても許されるという風潮があるからだ。
社会に横行する女性差別、そしてカースト差別が結びついて、特に低カーストの女性には何をしても許される、という雰囲気が社会に充満している。
インドを揺るがすレイプ殺人 なぜ悲劇は後をたたないのか。
これと同じようなことが、日本でも言える。
ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」が毎年発表している、男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」というものがある。
この「ジェンダーギャップ指数」で、日本の順位は世界144カ国中114位。
同じアジアの国々と比較しても、日本より下なのは韓国だけで、伝統的に女性の地位が低いとされてきたイスラム国家のマレーシアやインドネシア、そして上述のインドよりも日本の順位は下なのだ。
昨今では、医学部における女性差別が話題になったが、日本を動かしている政治家さえ「子供を産め」「結婚しろ」と女性差別発言を繰り返す。
そして、日本の会社の中でも、女性がまるでお偉いオジサンのご機嫌とりのような使われ方をする習慣が色濃く残っている。
自分が見聞きしただけでも・・・
・新卒1年目の女性は、飲み会で部長の横に座ってお酌をしなければならない
・バレンタインデーでは管理職以上にチョコを配らなければならない
・お茶だしは(お客さんが喜ぶので)女性がしなければならない
このようなことが日本人なら誰でも知っているような大企業で平然と行われている。
日本にもインドと同じように男性上位の社会の上で、女性には何をしても許されるという考えが未だに根強く残っているのだ。
そんな一部の日本人男性の奥底にある女性軽視が、「痴漢されやすい格好をしている方が悪い」といった論理を生み、痴漢を助長させる要因となっている。
痴漢の間接的要因4 自己主張を良しとしない文化と教育
「出る杭は打たれる」という言葉があるように、日本では自己主張や目立つことは良しとされない文化や教育がある。
日本人にとって「自己主張」と言うと、自分の言いたいことを遠慮なく叫ぶというイメージがあるが、ここで述べる「自己主張」は自分の言いたいことを論理的に述べ、相手を説得するコミュニケーションのことを指す。
日本と比較して、欧米で痴漢が少ない理由とされるうちの1つに「欧米人女性は痴漢をされたら黙っていない」というのがあるが、これは多くのアジアの他の国の女性にも当てはまるものだ。
「空気を読む」という文化がない海外では、自分の主張をどストレートに表現しないと相手に伝わらない。
長らく英国の領土であった香港では、学校教育でディベート(debate)の授業があり、自分の意見を表現する手段を子供の頃から学ぶ。競争の激しい中国やシンガポールでは、自分の意見をしっかり相手に伝えないと生きていくことすら難しい。
一方、日本では「自分が何をしたいか」ではなく、「相手がどう思うか」を優先的に考えるように教育され、対立や議論は悪だといった考えすら存在する。
よくスポーツ新聞なので、海外で活躍するサッカー選手が戦術について議論をしていただけなのに、「仲間割れ」や「内紛」と書かれるのはその典型的な例だろう。
対立を避けるためだけでなく、相手が年上であれば、自分の意見や考えを表現するのはNGと言った考えさえもある。
もちろん、この日本の文化や教育を真っ向から否定する訳でない。しかし、この自分主張や目立つこと、対立を良しとしない文化や教育が、声を上げられず痴漢被害者を泣き寝入りさせている大きな要因であることは間違えない。
このような日本の文化や教育の中で育ち、声を上げることを躊躇う女性につけ込んでいるのが、日本の痴漢をする人間達なのだ。
日本に痴漢が多い本質的な原因。それは長時間労働によるセックスレス!
今まで日本で痴漢が多発する間接的な要因を見てきた。では、日本で痴漢が起こるたった1つの本質的な原因とは何であろう?
それは長時間労働によるセックスレスだ。
以下の図は、コンドームで世界一のシェアを誇るDurex(デュレックス)が発表した世界各国の「1週間のうち、1回以上セックスをする人の割合」を示したデータだ。
・中国 78%・マレーシア 74%
・インド 68%
・タイ 65%
・香港 62%
・シンガポール 62%
・日本 34%
このデータを見てみると、日本は34%と断トツに低い数字で、同じアジア各国と比較してもその数字の低さは際立っている。
また年間の回数もアジア圏の国々は軒並み順位が低いものの、その中でもやはり日本はずば抜けて数字が低い。
これらのデータを見て、アメリカの著名なウェブメディア、Vox Media(ヴォックスメディア)は以下のような分析をしている。
People in Japan are really unhappy with their sex lives. It’s not surprising that the Japanese are having infrequent, unsatisfying sex. For years, Japan reported some of the longest average working hours in the world.
6 maps and charts that explain sex around the world
日本のセックスレスは長時間労働により、プライベートな時間が取れないことによるものだと説明している。
確かに日本の長時間労働は世界から見たら異常で、平日は帰って寝るだけという人も多くいるだろう。
欧米はもとより、文化や地理的に近いアジアの国々でも、多くの人は定時で仕事を切り上げ、家族と過ごすことに時間を割く。
そのため、これらの国々では、朝の満員電車や巨大なアダルト市場など日本と似たような環境もありながら、痴漢がほとんど発生しない。
日本では、痴漢をすることで自分が優位に立つ優越感や達成感、高揚感が痴漢を引き起こしているという意見もあるが、そうであれば日本以外の国でも痴漢が多発しても不思議ではない。
家族と過ごす時間さえ取れない環境の中で、セックスレスによる満たされない性欲が痴漢の本質的な原因となっているのは疑いの余地がないだろう。
長時間労働が引き起こすセックスレス。そして、セックスレスによる満たされない性欲。この本質的な原因に加えて、4つの間接的な要因(満員電車、巨大なアダルト市場、女性の社会的地位の低さ、自己主張を良しとしない文化と教育)が絡み合い、日本では痴漢が多発しているのである。
痴漢を撲滅するには、女性専用車両も監視カメラも不要!
日本では、痴漢を撲滅するために女性専用車両が導入されたり、監視カメラを車内につけるという議論までされている。
確かにこれらの策は即効性のあるものだが、痴漢の本質的な解決にはならない。
事実、女性専用車両も監視カメラもない国で痴漢が全く発生しない国はたくさんある。
痴漢を撲滅する本質的な解決策。それは誰もが家族と過ごす時間を当たり前に確保できるワークライフバランスではないだろうか?
「過労死」という言葉が世界に広く知れ渡り、自殺率も世界トップクラス。そして世界から技能実習制度が「奴隷制」と揶揄される。そんな日本の労働環境と異常なセックスレス、そして痴漢の多さ。
これらすべてが1つに繋がっているのだ。
誰もが家族と過ごす時間を持つことができる。海外の多くの国で当たり前のことが、日本では当たり前ではない。
昨今、議論されている男性専用車両や監視カメラの導入ももちろん良い。しかし、本質的な原因に目を向けなければ、電車内の痴漢が無くなっても、セックスレスによる満たされない性欲が別の形になって現れるのは目に見えている。
最後に 〜痴漢冤罪について〜
最後に男として触れておきたいのが「痴漢冤罪」だ。
「自分はモテる」「誰かに構って欲しい」「痴漢されたことがないのは女として終わっている」
このような思いから、カバンが触れただけでも「痴漢をされた」と叫ぶ虚言癖や情緒不安定、自意識過剰と言える女性が一定数いるのは確かだ。
中には脅迫目的や注意されてムカついたから痴漢と叫んだという冤罪も存在する。
プライベートではこのような女性とは距離をおけば良いが、不特定多数の人間がいる電車の中ではそうはいかない。
そして今の日本では、理不尽なことに「痴漢をされた」と言われただけで、男性の人生が終わってしまうようになっている。
だからこそ、(冤罪に関しては)立場の弱い多くの男性が「痴漢に関して女は自意識過剰」と怒りを込めて叫んでいるのだ。
そして、それに対して自意識過剰と言われるのを恐れて、泣き寝入りする痴漢被害者の女性が出てくる。
痴漢を起因にこれだけの負の連鎖が生まれている。
これらの痴漢冤罪を引き起こす女性に罰則をという意見も多く耳にするが、痴漢冤罪を引き起こしているのもまた痴漢なのだ。
痴漢がなくなれば、痴漢冤罪も自然に消滅する。
男女の専用車両、監視カメラ、フレックス制にして満員電車を緩和する。日本ではそんな小手先な議論ばかりされているが、本質的な原因に目を向けないと痴漢は減っても性犯罪は消えることはない。
誰もが家族と過ごす時間を当たり前に確保できる。
痴漢だけでなく、高い自殺率、過労死、少子化、未婚率の上昇。日本の社会問題の多くは、この「当たり前」の欠如から来るものなのだ。
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