香港での国際交流を目的とした集まりを通じて、知り合ったメンバーによるWhats App(欧米を中心に使われているLineのようなチャットアプリ)のグループチャットに参加している。
メンバーは20代から30代前半の香港、中国、台湾、韓国、日本、そして欧米出身の人達だ。
先日、お互いの会社の企業文化について話をしていたら、日系企業に勤める香港人の友人が・・・
と述べた。日本人の自分もいるので、気を使って欲しいところだが、他の多くの友人もこの意見に賛同していた。
長年、海外に住んでいる関係上、自分には外国人の友人が多くいるが、その中で海外にある日系企業に勤める友人も少なくない。
だが、その友人達の多くは日系企業に不満を抱いている。
また自分の住んでいる香港では、日系企業に対する下記のような情報も出回っており、その評判は芳しくない。
日本企業で働くなら、知らないといけない事実(在日本公司工作,你不可不知道的事實)
ここまで海外の日系企業のネガティブな評判を見聞きすると、日本人の自分としては心苦しい気持ちになる。
なぜ、日本の企業の評判はこんなにも外国人から良くないのだろうか?
今回は、日本人にとっては耳の痛い話だが、日系企業に勤めたことがある海外の友人達が語る日系企業が不人気な理由と、日本の企業がその汚名を返上できない訳について語っていこう。
目次
日本の会社が外国人に嫌われる5つの理由
日本の会社が外国人に敬遠される理由。
それは日本独特の企業文化にある。
日本の会社に勤めていると気づかないが、日本の企業文化はグローバルスタンダードとは大きくかけ離れたものになる。
そのため、上記で挙げた日本企業で働くなら、知らないといけない事実(在日本公司工作,你不可不知道的事實)なるものが出回るのだ。
では、いったい日本の企業文化のどこが、海外の人達から嫌われているのだろうか?
実際に、海外の友人達が述べた理由を5つ、順を追って紹介しよう。
理由1 評価するのは成果ではなく忠誠心? 時代遅れの給与体系
以前にも紹介したが、以下は日本の大学を卒業後、中国のある都市の日系企業で働く中国人の友人の本音だ。
「日本の企業なんかに就職するんじゃなかった」
日本の大学を卒業した中国の友人が語った本音。
いつの日か、東南アジアの人達も同じことを言う日が必ず来る。
外国人は安価な労働力じゃなくて、日本のファンになって貰うような国策をしないと、この国の未来はヤバいと思う。 pic.twitter.com/OEF2JMTqTO
— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2018年12月7日
彼が述べたように、海外の多くの若い人材にとって「日系企業は給与が安い」という認識がある。
では、なぜ日系企業は給与が安いのか?
理由は、大きく分けて2つある。
・日本の経済力の相対的な低下
海外の企業では本人の役割や結果で給与が決定するが、日本企業の給与は「その会社に何年いるか?」という在籍年数で決定される。
そのため、ローカルの外国人社員が業績に貢献する結果を出しても「在籍年数が短い」というだけで、日本の企業は見合った給与を与えず、業務中に暇そうに新聞を読んでる日本の本社から派遣されたオジサンが「在籍年数が長い」というだけで役職に就き、高い給与を貰うということが起きている。
日本では「面接で給与の質問をするのはNG」と言ったマナーが存在するように、お金の話は好まれない。
しかし、海外では年齢に関わらず、給与の額がその人自身の評価と考えられている。若いうちは、低い給与で「やりがい」といったもので誤魔化す様なやり方は通用しない。
このような「会社の忠誠心を評価する給与体系」を世界にまで持ち出しているところに、日本企業の不人気の原因があるのだ。
さらに、日本を代表する東芝やシャープと言ったモノづくり企業でさえ、アジアの国々の企業に買収されたように日本の企業の存在感は年々低下。
給与体系を抜きにして、給与の額だけで考えても日本の企業は欧米や中国資本の会社に後塵を拝している。
今の世界の若い優秀な人材は、そんな日本の企業に「給与が安い」と見向きもしないのが現実なのだ。
理由2 束縛が激しいメンヘラ体質? 長い拘束時間と長時間残業
日本のNHKや電通の社員の過労死は、香港やシンガポールでも大きく取り上げられた。
過労死という言葉が英語になるくらい、海外の人にとって日本の企業と過労死は結びついている。
香港の日系企業に勤めていた香港人の友人が、優秀なため日本の本社に3年間の駐在が決まった時、
と言って会社を辞めた話は以前もした。
それくらい「日本企業=長時間残業」というイメージを持たれているのだ。
そして、日本企業のこの社員を長時間拘束したがる体質は、副業の考え方でも現れている。
香港や中国を始めとして、海外では副業が当たり前の環境である。にも関わらず、現地の日系企業は日本ルールを持ち出して、副業を禁止しているところが多い。
その理由は、日本と変わらず「本業に支障が出るから」というものだが、本音はそうではないだろう。
日本国内でも同じことが言えるが、本音は・・・
お金を得る手段を自分たちの会社のみに限定して、会社への忠誠心を強制して植え付ける。
給与体系のみならず、社員個人の業務外の時間さえも束縛し、会社への忠誠心を誓わせる様な企業文化。
これを個人主義が強い海外の社員にも適用させてしまう所が、日系企業が敬遠される理由の1つなのだ。
理由3 日本の管理職はサル? 管理職のマネージメント力の欠如
「パワハラ」という言葉は元々和製英語だったが、日本発の言葉として英語にも浸透してきている。
「パワハラ」という言葉に代表されるように、日本の管理職の多くはマネージメントというのを「怒鳴ることで部下を思い通りにすること」だと勘違いをしているものが多い。
海外の人達、例えば欧米人はプライドが高く、中国や香港、タイなどのアジアの国々は面子を潰されるの極端に嫌う。
そのため、相手をリスペクトする言葉や態度がマネジメントには必須だ。
残念ながら、個人主義が強い海外の若者たちは、日本のような絶叫や恫喝による洗脳は通用しない。
国によっては、怒鳴ることを感情が抑制できない恥ずべき行為と認識される所もある。
中国の名門大学の1つ、四川大学を首席で卒業した友人の言葉を借りると、日本の管理職はこのように映るという。
また以前、日本で勤めていた時に、同期であるイラン人の同僚が上司の仕事のやり方についてある進言をした。
するとその上司は影でこの様に激怒していたと言う。
この様な管理職は周囲に1人くらいはいるのではないだろうか?
海外のビジネスの場では、建設的な議論を重ねていくのは当たり前で、そこには役職や年齢と言ったものは関係ない。
しかし、日本の管理職は海外の現場でも・・・
この様に部下を「いかに自分に従順か」で評価しようとする。
多くの日本人の管理職は、日本のやり方がそのまま海外で通用すると勘違いしているが、それは大きな間違いだ。
「体育会系」と言う言葉に代表される様に、恫喝や根性、やりがいと言った精神論や根性論で服従させるマネージメントでは、海外の優秀な人材はついてこないどころか・・・
と見下されてしまうのだ。
理由4 女性の仕事はおじさんのご機嫌取り! セクハラと女性差別
冒頭で紹介した別の香港人女性はチャット内でこのように語っていた。
日本では女性の仕事と言えば、男性の補助と未だに思っている管理職のおじさんも少なくない。
例えば、自分が日本で働いていた時の会社では、飲み会の時に新卒の女性は偉いおじさんの隣の席に座り、お酌しなければならないという暗黙のルールがあった。
さらにバレンタインデーではおじさんのために、女性がチョコを用意する。
女性の権利が強い海外では考えられないことだが、誤解を恐れずに言うと、日本のサラリーマン社会で女性が求められる役割は、おじさんのご機嫌取りと言っていい。
ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」が毎年発表している、男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」というものがある。
日本の順位は世界144カ国中114位。
そんな「男女平等後進国」の日本から来たおじさん達が、海外に行っても平気で女性差別やセクハラを繰り返す。
この昭和から変化しない日本人のおじさん達の女性に対する意識が、世界中の女性から総スカンを食らっているのだ。
理由5 日本人優先! 外国人にそびえる出世の高い壁
海外に拠点を置く多くの日系企業は、駐在員という形で本社から日本人を現地に派遣して、その会社の要職に就かせている。
日本人の駐在員が帰任すれば、さらに新しく来た日本人がその要職に就いていく。
現地の社員はどんなに優秀でも、海外支店の社長や部長と言った高いポジションは「日本人ではない」という理由だけでチャンスすら与えられないということが起きているのだ。
上記で紹介した日本企業で働くなら、知らないといけない事実(在日本公司工作,你不可不知道的事實)にも記載されている注意事項がある。
どんなにあなたが高い出世の階段を登っても、上の要職には自分より低レベルな日本人が居座っている。もし、野心があるなら日系企業以外の仕事を探したほうが良いだろう。
これは香港のwabサイトの引用だが、香港は決して反日という訳ではない。
それでも「日系企業は辞めておけ」と言われるのだから、日系企業の不人気さが伺えるだろう。
これだけ日本の会社は外国人に嫌われているのに、なぜ改善できない?
なぜ、こんなにも外国人から敬遠されているのに、日系企業はその企業文化を改められないのだろうか?
日本人は空気が読めるのではなかったのか?
実際、多くの日本人は、日系企業が外国人の間で不人気だということに気づいていない。
それはなぜだろうか? 理由は大きく3つある。
海外に出ても日本人としかつるまない閉鎖的な国民性
自分は現在香港に住んでおり、その前はシンガポールで暮らした経験を持つ。
今でこそ日本人のいない会社で働き、日本人のいないコミュニティに属しているが、シンガポール時代は、日系企業で働いていたので、海外生活における日本人村の閉鎖性というのを目の当たりにしてきた。
昼は日本人だけでランチ。
夜は日本人だけで飲み会。
週末は日本人だけでゴルフ。
会社員だけでなく駐在員妻、ワーホリなど、多くの海外在住の日本人は、その国にある日本人コミュニティ内で群れる。
そのコンフォートゾーン(Comfort Zone)から抜け出し、国籍に縛られずコミュニケーションを取れる日本人は非常に少ない。
もちろん、肝心のビジネスも日本人を対象にしたものが多く、海外の人の心を掴むものは少ないのが現状だ。
多くの日本人が、こんな閉鎖的な環境で生活しているため、海外の人から日系企業や日本人がどう思われているかというのを聞く機会すらない。
そのため、自分たちの海外での評判、グローバルな環境の中での立ち位置を理解できていないのだ。
日本は先進国という思い上がり
昔も今も、日本人駐在員などからよく聞かれる言葉に下記の様なものがある。
これは多くの場合、本当に「ローカル(現地)の社員が使えない」のではなく、「自分の思い通りに動いてくれない」という意味に等しい。
海外にやってきた日本人は・・・
と上から目線な考え方を持ったものが多い。
2,30年前までは、確かにこのセリフの通り、日本人は他国に比べ優秀で、日本のもの全てが最先端だった。
しかし、現在は国際的にも地位が低下し、労働環境も給与も良くない日系企業を本当に優秀な人材は選ばない。
特に若い大卒者は、アジアだけ見てもの日本の同年代の人材よりはるかに優秀だ。
このセリフが表しているものは、本当にローカル(現地)の社員が使えないのではなく、本当に優秀な人材は日系企業を選ばないという事実なのだ。
日本人は外国人社員に対して、昔も今も同じセリフを吐いているが、30年前と今とでは全く意味合いが異なってくる。
だが、そのことに多くの日本人は気づいていない。
既得権益層の日本人にとってメリットがない
仮に日本の企業が、その企業文化の悪い点を改め、グローバルスタンダードなものにしたとしよう。
そうすることで、不利益を被る人達がいる。
それは誰か?
それは他ならぬ日本人だ。
日本人というだけで、海外支店のトップにつけたり、在籍が長いというだけで高い給与が得られる。
これらの現状のシステムを国籍や在籍年数に関わらず、昇進や給与をフェアにすることで、既得権益を持つ日本人の多くがその地位を脅かされることになるのだ。
企業の競争力という観点から見れば、国籍や在籍年数に関わらず、昇進や給与をフェアにすることが一番良いのは小学生でも理解できること。
しかし、外国人の優秀な人材が入ってくれば、社内の英語化、物言う部下、体育会系のマネージメントの不通などで、出世レースから脱落する日本人が多く出てくるのは必須。
日本人というだけで甘い汁を吸っていた人間からすれば、現状を変えることにメリットは何もないのだ。
最後に
以上のことをまとめると、外国人が日本の企業を嫌う理由は以下の通りになる。
2.業務時間内外関わらずの拘束
3.管理職のマネージメント力の欠如
4.セクハラと女性差別
5.出世の高い壁
そして、空気の読めるはずの日本人がその企業文化を改められない理由は大きく3つ。
2.自分達は先進国という思い上がり
3.既得権益層の日本人にはメリットがない
グローバル化が進む現在、世界展開をしている企業の多くは、ローカライズ化や世界統一のフェアな人事制度の導入をしている。
対して、その様な点で日本の企業の多くは大きく出遅れているのが現状だ。
「日本はすごい!」「日本は世界から好かれている!」
こう言った内容を海外の声として紹介するもの良いが、この様な日本企業で働くなら、知らないといけない事実(在日本公司工作,你不可不知道的事實)と言った声も存在することを日本人自身がきちんと受け止めないと、いつまで経っても日本は裸の王様を抜け出すことはできないだろう。
日本は古来の価値観とグローバリズム(新自由主義)の悪いとこ取りをしている。
日本独特の生きづらい価値観をどうにか昇華させ、更に新自由主義を追い出さないと、進歩は始まらない。