グレーターベイエリア構想。今熱い中国の国家プロジェクトをわかりやすく解説してみる


香港や深圳にいると度々耳にする言葉がある。
 

その名は「グレーターベイエリア構想」(中国語:粤港澳大湾区、英語:Greater Bay Area)。
 

中国が一代国家プロジェクトと位置付けるある計画が、中国の南側で今まさに動き出そうとしている。
 

日本にいると北京や上海の東海岸ばかりが注目されがちだが、中国国内では深圳や広州がある広東省、香港、そしてマカオを含めた華南と呼ばれる地区が、今、アツいのだ。
 

今回は、日本人にはあまり馴染みのない、この華南で行われようとしている中国の一代国家プロジェクト「グレーターベイエリア構想」を自分のパートナー(中国・上海出身)にも手伝ってもらって、わかりやすく説明しようと思う。 

※写真はイメージです
「グレート」じゃなくて「グレーター」ね。間違えやすいから要注意!
 

 

グレーターベイエリア構想(粤港澳大湾区)とは?


広東省・香港・マカオで行われようとしているグレーターベイエリア構想とは何か?
 

簡単に言うと広東省9都市と香港、マカオを合わせて、1つの地域として一緒に発展を目指そうという計画のことだ。
 

2009年から議論が始まり、2017年3月に国の経済戦略としてに正式に組み込まれた。
 

このグレーターベイエリア構想は、香港、マカオの2つの特別行政区と、広州、深圳、珠海、仏山、中山、東莞、恵州、江門、肇慶の広東省9都市で構成。
 

現在、これら11都市の総人口は6,800万人と中国全体の5%未満だが、GDPはなんと中国全体の約12%をも占めている。 

現代版シルクロードと言われる「一帯一路構想」と並んで、今後の中国の経済成長におけるの重要な役割を担うと予想されているのだ。
 

※写真はイメージです
これらの都市が人や物流、各サービスを連携して、強硬な経済圏を作っていこうっていう考えだよ。

グレーターベイエリアとはどこ?


グレーターベイエリア構想圏にある広東省9都市と香港、マカオは、中国の南の「華南」と呼ばれる地域にある。
 

このグレーターベイエリアにおいて、キーとなる都市が香港。そして中国の4大都市と称される「北上広深」(北京・上海・広州・深圳)のうち2都市、広州・深圳だ。
 

何かと話題になる通信機器大手のファーウェイ(華為技術)や10億人以上が利用するチャットアプリ”WeChat”を提供するテンセント(騰訊)と言ったハイテク産業が本社を置き、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深圳。 

自動車製造の中心地で中国有数の商業都市・広州。そして、中国のゲートウェイとしての役割を果たし、アジアの金融のハブである香港。
 

これらの都市がヒト・モノ・カネを連携して、より強硬な経済圏を作っていこうという訳だから、そのポテンシャルは計り知れない。
 

※写真はイメージです
東芝の白物家電を買収した「美的集団」、世界シェア5位と6位のスマホメーカーの「OPPO」や「Vivo」、ドローンの「DJI」も広東省に本社を置いているよ。
 

ちなみにこの深圳、広州、香港の3都市は、毎年GDPで激しいデッドヒートを繰り広げている。
 

長年GDPでは香港が大差を付けていたが、近年は深圳、広州が著しい成長率で追い上げ、香港に肉薄する展開となっている。

グレーターベイエリア構想、具体的には何をする?


実はグレーターベイエリア構想(粤港澳大湾区)の具体的な計画案の詳細は未だ発表されていない。
 

2019年の早い時期に、具体的な計画案の発表があると噂されるが、ここまで先延ばしにしている理由は、目下、貿易戦争をしてるアメリカを下手に刺激しないようにするためとも言われている。
 

しかし、18年9月に広東省広州市と香港を結ぶ高速鉄道が、続いて10月には、香港—広東省珠海—マカオを結ぶ、世界一長い海上橋(総距離55km)「港珠澳大橋」が開通。広東省の各都市と香港、マカオへの陸路での距離が一気に縮小した。 

これらはグレーターベイエリア構想の域内一体化に向けた、重要な交通インフラとしての役割が期待されている。
 

※写真はイメージです
「港珠澳大橋」が開通してから、香港と広東省の移動時間は4時間から45分までに大幅に短縮したよ。
 

香港高速鉄道で広州まで行ってみた。切符の購入方法から乗車までの流れを紹介。

世界一長い海上橋「港珠澳大橋」 星島日報

グレーターベイエリア構想、今後の成長率は?

広東省・香港・マカオのグレーターベイエリアを1つ国とみなすと、2017年時点でのGDPは1.5兆USドルとなる。これは世界で11~12番目の大きさだ。
 

現在のところ、サンフランシスコ、ニューヨーク、東京湾が世界3大ベイエリアとして数えられるが、2020年には、このグレーターベイエリアの経済規模が東京ベイエリアと同水準に到達するとの見方もある。
 

さらに英国の金融大手HSBCは、2025年までには域内GDPが2.8兆USドル(約310兆円)まで膨らみ、世界9番目の規模までになると予想している。
 

このように、広東省・香港・マカオのグレーターベイエリアは非常に大きなポテンシャルを持ち、世界中から注目されているエリアなのだ。
 

※写真はイメージです
現在のグレーターベイエリアのGDPは、韓国やロシア一国と同水準にあるんだよ。

グレーターベイエリア構想、今後の課題は?

グレーターベイエリア構想は大きなポテンシャルを持つものだが、課題も多い。
 

香港とマカオは「一国二制度」のもと、中国本土とは法律、税制、通貨など様々なものが異なっている。これらの相違点をどう埋めていくかが、このグレーターベイエリア構想の鍵となるだろう。
 

さらに、今後、このエリア一帯の土地の値段は大きく値上がる(香港はすでに東京の二倍以上の値段になっている)と予想され、高い生活コストで高度な人材が集まるか、また企業の販管費の上昇で競争力を保てるかどうかが懸念されている。
 

※写真はイメージです
法や通貨だけじゃなくて、大陸と香港、マカオでは人の性格や気質も大分違うんだよね。
 

課題も多いが、この地域内に住んでいると、多くの国がこのグレーターベイエリアに注目しているのがわかる。
 

つい最近、日本の大手電気機器メーカー・キャノンもこのエリアに注目し、深圳に新会社を立ち上げたばかりだ。
 

今、この華南は中国で一番アツい場所なのは間違えない。

参考:Greater Bay to drive China’s growth
The Greater Bay Area -Bridging businesses to a world of opportunity-


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