今、日本でも、ここ香港でも話題になっている中国のドルガバ炎上事件。
ドルチェ&ガッバーナのデザイナー、ステファーノガッバーナの中国を侮辱する発言から、上海のショーがキャンセルされ、契約タレントが次々と解約を宣言。そして中国のすべてのECサイトから、ドルガバの製品が撤去される事態にまでに発展したのだ。
しかし、この一連の事件の日本人の反応を見ていると・・・
一連の中国のドルガバ不買運動に対して、欧米のブランドに真っ向から喧嘩を売ったことに対する憧憬や品がないと言ったネガティブな批判まで様々なものがある。
ただ一つ確かなことは、多くの日本人は、これを欧米ブランドvs中国という構図で見ており、ドルガバの広告やステファーノガッバーナの言動は、中国だけに向けられたものだから「自分たちには関係ない」「対岸の火事だ」と言った風に日和見的なものの見方をしている。
だが、自分は、今回のドルガバ事件の日本人の反応を見て「日本人は世界からどう見られているのか」という点で、日本と世界では深い溝があると感じざるを得なかった。
今回は、アジア人差別に対しての中国人の反応をヒントに「日本人としてアジア人差別にどう対処していくべきか」について書いてみようと思う。
アジア人差別に関して、当事者意識がない日本人たち
今回のドルガバ事件の中心人物、ステファーノガッバーナはイタリア人だが、アジア人差別というのは、何も欧米だけでなく、アジア地域以外では至る所に存在する。
なぜ海外でアジア人差別は起こるのか?多い国は?その理由とは?
しかし、多くの日本人は・・・
この様に思っている。
自分自身も日本の外に出るまで、心のどこかで日本は特別な存在だと思っていた。
今の日本の教育では、どう教えているかはわからないが、自分が小学生の頃は、「日本は戦後の焼け野原からGDP世界第二位までになったすごい国」「アパルトヘイト下の日本人は名誉白人として讃えられていた」等々、日本を褒め称える内容のものが多かった。
さらに、テレビを始めとした多くのメディアでは「日本は世界から好かれている」「日本の技術はすごい」と言った日本を礼賛したものが溢れている。
しかし、現実は違う。
日本人の多くがバルト三国(ラトビア・エストニア・リトアニア)の区別がつかないように、アジア以外の地域の人達からは、アジアの国々の区別、特に日本、中国、韓国の区別はつかないのだ。
世界の多くの人々は、日本、中国、韓国が違う言語であることも、ソニーとサムスンとファーウェイが、それぞれどこの国の会社なのかもわからない。
だが、多くの日本人は、そのことに気づかず「日本だけは特別な国」と思い込んでいる。
問題なのは、安っぽい愛国心を植え付ける日本の教育やメディアではない。
自国を礼賛する教育は世界中に存在するし、日本礼賛番組の製作者達も本当に「日本が世界中から好かれるすごい国」とは思っていない。ただ、日本を礼賛する番組を作っておけば、多くの視聴者が絶賛し、視聴率が取れるということを知っているだけだ。
問題なのは多くの日本人が、自国の教育やメディアを鵜呑みにし過ぎていて、自分の頭で考えず、思考停止していることなのだ。
「自分たちは特別な存在。だから、アジア人差別は関係ない」と。
日本人の中に存在する欧米人への憧れとアジア人への優越感
アジア人差別の当事者意識が希薄な日本人達。
「自分たちを特別視する」故に、アジア人差別に対する意識が希薄なことの他に、もう一つ日本人が抱える大きな問題点がある。
それが欧米の白人に対する過度なリスペクトだ。
最近、韓国の人気アイドルグループ、BTS(防弾少年団)のメンバーが、原爆投下直後の長崎の写真がプリントアウトされた「原爆Tシャツ」を着用していたことが問題になっている。
しかし、もし相手が韓国のアイドルではなく、アメリカのハリウッドスターやベッカムやC・ロナウドのようなヨーロッパのスターサッカー選手だったらどうだろうか?
韓国のアイドルに対して行った出演の取り消しや批判等々、今の日本人にどれだけ同じようなことができるだろうか?
前にも書いたが、自分が日本で働いていた頃の同僚で、どんなに繁忙期でも必ず定時で帰宅する白人の同僚がいた。
彼が定時で帰宅しても、周囲の日本人の反応は・・・
と言って、特に咎めたりはしなかった。
しかし、同じことを中国人や韓国人、東南アジア出身の同僚がするとどうなるだろう?
同じ日本人からの評価が・・・
となってしまうのだ。
これはもう一種の「レイシズム(人種差別)」と言ってよい。
多くの日本人は認めたくない事実だと思うが、日本人の中に無意識の欧米人への憧れと他のアジア人への優越感が確かに存在しているのだ。
アジア人差別にはアジアの国々と共闘を!
上記のような日本人の中にある無意識の欧米人への憧れが、一部の欧米の白人によるアジア人差別を加速させている面はある。
※もちろん、欧米人以外にもアジア人差別をするものはたくさんいる。詳細と理由はこちらを参照。
そのような思い上がりが、今回のドルガバ事件や日本をバカにしてお金を稼ぐYoutuberや「白人なら日本女性と簡単にやれる」と豪語するような男を生み出しているのだ。
そんな中で、今回の中国のドルガバ事件は一つの解を与えてくれたと思う。
それは「相手が誰であろうと差別に対してNOと言える姿勢」だ。
日本はアジアの人々には強くものを言えるが、欧米の人々には差別されても何も言うことができない。
だが、中国はそうではなかった。
もちろん、そのやり方の是非や文化的背景等、日本と大きく違うところもあるので、議論の余地は多々ある。
しかし、少なくとも差別をしてきたものに対して、謝罪させたと言う結果は大いに評価できるものだ。
無意識の欧米人への畏怖が燻っている日本人では、謝罪までもっていくのは困難を極めるだろう。
日本一国では難しいからこそ、このようなアジア人差別にはアジア人同士で協力して、声を上げることが重要になる。
今回のドルガバ事件で言えるのは、ベジータ(中国)やピッコロ(韓国)と仲良くする必要は必ずしもないけれど、宇宙にはもっと巨大な敵・フリーザ様(欧米のアジア人差別)がいるってことなんじゃないかな・・・
— Johnny@世界のどっか (@ucango_anywhere) 2018年11月22日
世界No.1の人口を擁し、経済でも世界を席巻する中国、成長著しい6億の人口を擁するASEAN諸国、K-popやドラマなど世界で人気を集めるコンテンツを持つ韓国。
合計人口は20億人超。これらのアジアの国々はマーケットとしても世界から無視できない存在だ。
これらの国々で、アジア人差別に対して、一斉に声を上げれば、差別に対して大きな抑止力になる。
極論を言うと、今回のドルガバ事件の差別に対しては、日本も韓国もASEAN諸国も声をあげて不買運動をしても良いくらいだと思うのだ。
だが、アジアの国の中でも日本・中国・韓国の三ヶ国は、長年、歴史や領土問題など、隣国故の様々な問題が横たわる。
これら三ヶ国の溝を埋めるのは難しいだろう。しかし、決して仲良くなくても、アジア人差別という共通の敵に対し、共闘はできるはずだ。
ドラゴンボールで、主人公の悟空が、より巨大な敵・フリーザを倒すために、かつての敵、ベジータやピッコロと共闘したように。
確実に言えることは、日本人がどう考えようと、日本はアジア人差別の対象者と言うことだ。
それを理解した上で、日本は差別に対してどのように振る舞えば良いか。
中国が欧米ブランドを謝罪に追い込んだことで、日本に突きつけてきた課題と言えよう。
最後に
自分の留学時代のクラスに、今回のドルガバ事件の中心となったイタリアや中国出身のクラスメートもいた。
人種や宗教など違いはあれど、皆で自国のことを話し合ったり、将来について語ったりと有意義な時間を過ごし、人種差別と言う言葉とは無縁な場所だった。
もちろん、世界中の全てが、このような差別と無縁な場所であったら良いが、残念ながらそうではない。
一部ではあるが、人種や肌の色、外見、宗教等の様々な違いで、差別をする人間は世界中にいる。
差別を完全に無くすのは難しいかもしれない。だが声をあげなければ無くなることはない。
相手が誰であれ、差別に対して声を上げる。
世界中を周って、そのことを痛感しているからこそ、日本人のアジア人差別に対する欧米人への反応がもどかしく、中国人の相手が誰であれ、差別に対して声を上げる姿勢がちょっぴり羨ましかったりするのだ。
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